海鮮料理
「花はどこへ行った」というフォークソングの名曲があります。ピート・シーガーというアメリカンフォークの草分け的存在が1955年(半世紀も前!)に発表した曲で,1962年にキングストントリオがカヴァーした頃から代表的な反戦歌として扱われました。ヴェトナム戦争が激化し始めて時期に当たります。
フォークソングとはまるで関係のない戻り鰹のお話です。毎年夏の間北上していた(津軽海峡辺りで戻ってくるんだそうですが)かつおが冷たい海水によってたっぷりと脂を蓄えて戻ってきます。9月から捕れ始め,漁期は11月まで続きます。
春先の若い初鰹と違い,たっぷりと脂の載った戻り鰹の刺身はそりゃぁもう美味いものです。かつおにはプリン体が多いといわれますから痛風の患者さんや尿酸値の高い人には我慢していただくしかありませんが。
旬の魚は安くてしかも美味い,これは常識です。この時期の戻り鰹は大量に捕れるから安く,初鰹の時期には一節500円を超えていたものが二節(半身)でその程度までにやすくなります。市場への供給量が多いからですね。
加工が間に合わないほど捕れるのかそれとも加工の手間賃をかけず消費者に安く提供しようとする考え方なのかその辺は良くわかりませんが,半身が皮付きのまま店頭に並べられることがあります。
まるで味が違います。魚なら何でもそうですが,皮を剥いてしまうと空気に触れ味が急速に落ち始めます。同じ日に同じところで捕れた戻り鰹でも皮付きを買い求め家庭で皮を剥いでお造りにしたものと,皮を剥いた状態で買ったものとではこれが同じかつおかと思うほどに味が違うんですねぇ。チャンスがあれば是非お試しください。
ところで今年はどうしたことでしょう。本来の戻り鰹の時期である9月からこれまで待ちましたが,戻り鰹は一向に店頭に並びません。相変わらず冷凍したものの解凍品ばかりです。ちなみによほどでない限り解凍品は買いません。この時期かつおだけが旬を迎えるわけではないんですから。
何年か前にも同じようなことがありました。全く戻り鰹を食べられない秋があったんです。翌年まだ初鰹が九州の南端辺りで捕れ始めるかどうかという時期にかつおの解凍品が売られました。
腸だけととって冷凍したものを上手に解凍しているので,時間が経ったかつお独特の臭みもありません。それはそれで美味しく頂いたんですが,果たしてこのかつおはどこから来たのだろうか、という疑問が湧いてきました。
かつおは新鮮なものを早くに食べるという習慣がまだ優勢で,同じ仲間のマグロは冷凍・解凍品があたりまえなのに,冷凍品が市場に占める割合はずっと少ないようです。「ははぇ〜っ!これは水産業者の戦略に違いない!」
最も品質の良い時期の戻り鰹を捕獲し,世界でも指折りの冷凍技術で冷凍して倉庫にしまい込み,需要と市場価格を見て放出する業者の戦略,きっとそうに違いない!と調べたわけでもないんですがそう確信するに至りました。
もう11月も後半に差し掛かり,通常なら戻り鰹の漁も終わりを迎えます。いよいよ今年は戻り鰹を食べられないまま終わるのか,あぁ!
戻り鰹の刺身に擂り小が,にんにくスライス、溶きがらしを付けて醤油かポン酢につけた大きな切り身を口一杯に頬張り,これまた良質の日本酒を冷や(常温)でやる,至福の時です。これも今年は夢のまた夢か。
酷暑だった今年の夏,その影響で戻り鰹が「出遅れ」、12月に入って本格的に味わえるはず,そんな妄想をしています。
それにしても「戻り鰹はどこに行った?」


