郷土料理
焼酎を最初に口にしたのは奄美大島の古仁屋という街です。サトウキビを原料としたアルコール度40度の黒糖焼酎その名も『瀬戸の灘』。いやはや強烈でした。
当時は大学に入ってから一年ほど経った頃で船舶実習の途上奄美大島に寄ったたのでした。大学は全寮制で4年を部屋長に1年までがひとりずつ共同生活をしていました。専ら酒で鍛え上げる、のは今も昔も変わらない。よく飲まされましたしよく嘔吐を繰り返していました。
この瀬戸の灘を最初に口にしたとき、その強さにも驚きましたが、なんといっても風味です。汚い話で申し訳ないですが、まさしく自分の吐瀉物と同じ臭いがするんです。そんなわけで、焼酎に対する第一印象は散々なものでした。
年月を経ること30年余り、今では焼酎も好きな酒の一つです。それもにおいの強い本格焼酎がほとんどです。麦、芋、ジャガイモ、そば、といろいろ原料はありますが、においの強いほうが好みです。
今では本格焼酎と呼ばれていますが、当時は乙類と呼ばれていました。甲類焼酎は化学合成したホワイトリカーと呼ばれるもので酎ハイのベースになるあれです。その後焼酎製造組合から、本格蒸留したものが粗製濫造化学合成品より地位の低い乙類とは何事、と猛抗議が寄せられ『本格焼酎』と呼び名が変わったのはそれほど古い時期ではありません。
芋焼酎をお湯割にして香りを立てて飲むのも好きですが、泡盛をオン・ザ・ロックにして飲むのも劣らずに好きです。
レストラン検索サイト「ぐるなび」仕事でよく出張に出かけますが、九州・大分県の臼杵市は中でも頻繁に訪れるところです。臼杵市はキリシタン大名として有名な大友宗麟が最初に城を築いた所で、何代かを経て稲葉貞道(春日の局・お福の子息と聞く)が入府した後廃藩置県まで稲葉氏が歴代藩主として統治した所です。
古びた町並みの残る静かなところは今でも変わらないが、数年前『なごり雪』という映画のロケ地になった頃から観光地としての整備に力を入れ始め、今では古い町屋に営業中の商店を入れるなど静かなたたずまいを残したまま、観光スポットとしてなかなか魅力溢れる町になりましたね。
ある日いつものように一仕事終えた後、ふらりと街に出てみました。『二王座』という、古い家並みが続く通りを抜け、いつもの舗に行く。若い頃は肉を好んで食べたものですが、最近では専ら魚料理に食事の中心が移ってきています。臼杵はふぐ料理が実は有名で、ふぐ専門の料亭が軒を重ねています。
近場で獲れたふぐは大分、別府、福岡と大消費地に送られ、高い値がつくのだそうですが、地元では比較的割安で楽しめます。もっとも会社から給付される出張旅費ではふぐにはとんと縁がありません。、それなら、と地元ならではの料理を探し始めて、気が付いたら最初に臼杵という街に足を踏み入れてからもう15年にもなってしまいました。
りゅうきゅういうのはそのような手軽に食べられる料理の一つです。メニューの表記は必ずひらがなで、本来の琉球である沖縄との関係は改めて確かめたことはありません。味は店によって微妙に違いますが、基本的にはしょうゆに出汁、酒を混ぜたたれに、ぶりやらはまちやらの魚を漬け込んで馴染ませた料理で、注文すると『にんにくにします?それともしょうがで』と必ず聞かれます。
たれに混ぜるのをどちらにするか、ということなんですが、にんにくは少し味がしつこく感じるので、専らしょうがにしてもらっています。一切れずつつまみつつ、これも地元名産のかぼす(香母酢、と書き柑橘類だが、柚子とも酢橘とも違うもの、どう違うかといわれてもよく分からないんですが!)をたっぷり絞り入れた麦焼酎をロックで。
そういえば、焼酎といえばアルコール度数25度が多いんですが、大分県では20度がほとんどで、水割りでもウーロン茶割りでもなくロックにして呑むのが一般的ですね。
ヅケ、という料理はご存知と思います。おすし屋さんでよく聞きますよね。元々保存が難しい鮮魚を何とかして保たせようといろいろ工夫した江戸前寿司の技法のひとつです。りゅうきゅうはこのヅケのやり方とよく似ているようです。 本格的な調理法はなかなか教えてはもらえませんが、何度か味わって見当をつけ自分で作ってみるのもまた味わいを愉しむ一つの方法だと思います。
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さて本編のお題は『ゴマだし』です。同じ九州は大分県でもなぜか佐伯という地域でしか手に入らないんです。佐伯ではスーパーに当たり前のように並んでいるものですが、近隣の他の町では手に入らないばかりか名前すら知らない人が殆どで、佐伯に美味いものがある、と逆にその人たちに紹介してあげたくらいです。
ゴマだしはうんと簡単に言ってしまえば魚を焼いて細かく切ったものにゴマを擂り潰したもの、醤油と何かを加えて良く混ぜ合わせ、仕上げにつぶさないゴマを加えたペースト状の物で、佐伯の人たちの食べ方は「ごまだしうどん」が一般的です。 これは茹でたうどんを丼に盛り付け、ゴマだしを好きな量だけ載せたら上から熱いお湯を掛ければ、あっという間に魚だしの風味豊かなうどん1杯の出来上がり。だしを別に取る必要が無い、真に便利な調味料なんです。
一瓶500円程度だから決して高くなく、佐伯に行く度に買い込んでお土産にしています。 うどんの代わりに温かいご飯の上に掛けお茶漬け風にしても良いし、お湯を掛けずにご飯とさっくり混ぜ合わせて食べる人もいます。
好みは、白身魚の刺身をこのゴマだしで和えて、ご飯の上に載せてから熱いお茶を掛ける、と言う『鯛茶もどき』。これはご飯のおかずだけでなく、酒の肴にもピッタリですね。
南隣・宮崎県には、ゴマだしと似たような材料を使って『冷汁」と言う郷土料理が有ります。味は似ているが食べ方はまるで違うようです。この冷汁もどきもゴマだしを使って作ったことが有ります。食欲の失せる暑い夏の昼飯に最適で、鍋一杯に作った『冷汁もどき』があっという間に売り切れてしまいました。
ゴマだしはお取り寄せも可能。是非食べてみたい、という人はコチラへ。
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